2012年8月16日木曜日

多変量解析事例集(乳液の効能評価データの解析)

大学の図書館の本って誰が購入しようって決めるのだろう…
今日も大学の図書館で見つけた本を読んだ(ちょっとだけ)

これ!
多変量解析事例集〈第1集〉

私が読んだ箇所は
「乳液の効能評価データの解析」
について.

内容は,

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【官能評価と肌測定による乳液の分類】
〈実験概要〉
オイリー肌1名・ノーマル肌2名・ドライ肌1名の専門パネルが乳液の使用・評価を行い,肌測定の被験者となった.
試した乳液は22サンプルで,1サンプルあたり2回使用した.
肌測定は水分量,油分量の測定を
(1)塗布前:水分・油分,(2)30分後:水分,(3)1時間後:水分・油分
と3回行った.※(2)と(3)の測定値は(1)の塗布前の値との差をとり補正した.

〈データと事前検討〉
変数は13.
その内,アンケート項目(官能評価項目)は10で,内容は
{膜厚感,ベトつき,乾き,しっとり感,さっぱり感,肌の柔軟性,さっぱり感(1時間後),しっとり感(1時間後),肌の柔軟性(1時間後),総合評価}
となっている.
残りの3つは測定値で
{水分測定量(30分後),水分測定量(1時間後),油分測定量(1時間後)}
である.

元データを[パネル×使用回数]を繰り返しとみなして官能値の中央値および測定値の平均をとり,[22ケース×13変数]のデータ行列に変換DATA1.基本統計量(相関係数行列)から
”各官能特性からの総合指標の導出と,製品分類が可能であると推測される.一方,塗布1時間後の肌測定値については総合評価値と0.4〜0.5の相関がある程度で,官能値を単独の物理量で説明は出来ない.”ということが分かった.

〈主成分分析〉
データについて,相関係数からの主成分分析により解析した.
因子負荷量の検討結果より,
第1主成分ー官能特性,第2主成分ー効能特性(油水分バランス)と解釈できた.
寄与率は第1主成分が53%で,第2主成分が18%で2つの因子でタイプ分けが可能であると考えられる.以上の解析より,乳液は2つの主成分によって,以下の4タイプに分類できる.
A: 官能:リッチ,効能:水分型(第1+,第2+)
B: 官能:リッチ,効能:油分型(第1+,第2ー)
C: 官能:ライト,効能:水分型(第1ー,第2+)
D: 官能:ライト,効能:油分型(第1ー,第2ー)

主成分スコアによる各サンプルの位置づけをみると,
ドライ肌用乳液は効能水分型と効能油分型に分類出来た.
ノーマル〜オイリー肌用乳液は全体的にさっぱりした使用感になっており,第2主成分の絶対値は低く,効能は適度に抑えられたということが分かった.


【肌質別評価結果の解析】
〈データと事前検討〉
元データを[サンプル×パネル×使用回数]をケースとみなし,各肌質毎にそれぞれ以下のデータ行列に変換し,検討を行った.
(1)DATA2:ドライ肌1名のデータ,56ケース×13変数
(2)DATA3:ノーマル肌2名のデータ,72ケース×13変数
(3)DATA4:オイリー肌1名のデータ,40ケース×13変数

〈主成分分析〉
データ毎の固有値と因子負荷量のプロットを挙げた.肌質別の評価構造の特徴は以下のようにまとめられた.
(1)DATA2
各官能特性間の関連が高いが,水分と官能特性は独立している.総合指標の寄与率は高く,官能特性による分類に適している.
(2)DATA3
水分量としっとり感・肌の柔軟性,油分量と膜厚感・べとつき等の官能値が関連しており,肌効果を水分・油分として判断する能力がある.効能効果の評価に適している.
(3)DATA4
1時間後のさっぱり感が他の項目と独立している等,他の2タイプの肌とは評価構造がやや異なる.

以上より,ノーマル肌の評価結果が比較的効能を分析するのに適しているという傾向がみられた.

【官能値と物理量(肌測定)の対応】
〈データと事前検討〉
乳液の効能を説明するのによく使われるしっとり感は,適度な水分と油分のバランスと関連が深いと言われている.ここでは肌測定との対応を検討.
DATA1より1時間後のしっとり感を解析するために,一部を抽出,変換し,データ行列DATA5を作成.
変数は
{水分測定量,油分測定量,油水分バランス,しっとり感}
の4つ.
〈重回帰分析〉
DATA5をしっとり感を目的変数,物理量を説明変数として,重回帰分析により解析した.回帰式は

y = 2.495 + 2.919x1+ 1.011x2 + 0.000 (水分タイプの人)
y = 2.495 + 2.919x1+ 1.011x+ 0.961 (油分タイプの人)

となった.しかし,説明率は0.629と十分高いとはいえない.
各説明変数の標準偏回帰係数をみると,水分量x1が0.986で,しっとり感を感じるには主な原因として水分が必要であることが分かった.さらに回帰式からもわかるように,油分と油水分のバランスが関係していることがわかった.
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長くなってしまった..そして,ブログを書くのって時間がかかる.
内容はほぼ引用したので参考文献をもう一度明記→(多変量解析事例集〈第1集〉)

題材が乳液だからとても興味を持って読めた!

自分の肌の油水分量を測定したら,自身に丁度良い乳液を解析によって見つけられるかもしれない!もしそれできちんとした結果を出せたら,「あらゆる乳液試す必要なくなる!お得!」解析を勉強している女性の特権!


参考文献にあった著者の
化粧品のタイプ分けに関する研究-乳液の物性と官能の対応化についての新知見
も読んでみようと思ったのですが,研究室のプリンターが壊れているので今度コピーして読もうと思う.

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